j((1+sqrt{-7})/2),j((1+sqrt{-11})/2),j((1+sqrt{-19})/2)
[2002.04.07]j((1+sqrt{-7})/2),j((1+sqrt{-11})/2),j((1+sqrt{-19})/2)
類数1の虚2次体K=Q(sqrt{-7}),Q(sqrt{-11}),Q(sqrt{-19})に対して、それぞれの整数環RKのmodular j-不変量を計算する。
結果は、以下の通りである。
j(RQ(sqrt{-7})) = j((1+sqrt{-7})/2) = -3375 = (-15)3
j(RQ(sqrt{-11})) = j((1+sqrt{-11})/2) = -32768 = (-32)3
j(RQ(sqrt{-19})) = j((1+sqrt{-19})/2) = -884736 = (-96)3
■j((1+sqrt{-7})/2)を求める。
R \cong End(E)となる楕円曲線Eをとる。
ρ=(1+sqrt{-7})/2とする。RK=Z+Zρである。
ρのnormは、|NQKρ|=((1+sqrt{-7})/2)*((1-sqrt{-7})/2)=2である。
EはRによる虚数乗法を持つ。isogeny [ρ]:E → Eは2次である。
j(τ)=j(E)となるτ∈Hを固定する。ρによる乗法で、Zτ+Zは、index 2の部分格子に写る。
つまり、あるa,b,c,d∈Z,ad-bc=2に対して、
ρτ=aτ+b
ρ=cτ+d
となる。α=((a b)(c d))∈D2とすると、
j(ατ)=j((aτ+b)/(cτ+d))=j(τ)=j(E)
となる。定義より、j \circ αは、2次のmodular多項式F2(j,X)の根であるので、X=j \circ αを代入して、τの点で評価すると、
0=F2(j(τ),j(ατ))=F2(j(E),j(E))=H2(j(E))
多項式H2(X)は、有理整数係数で、係数±1で始まる。よって、j(E)は、代数的整数である。
pari/gpで、H2(X)を計算すると、
H2(x) = -x^4 + 2978*x^3 + 40449375*x^2 + 17496000000*x - 157464000000000
= -(x - 8000)*(x - 1728)*(x + 3375)2
であるので、j(E)は、8000,1728,-3375のどれかである。
また、Kが類数1なら、j(RK)は、有理整数であることが分かっている。pari/gpでτ=ρとして、直接j(τ)を近似計算すると、
j(τ) ≒ -3374.99999999999999
となるので、
j(τ) = j((1+sqrt{-7})/2) = -3375 = (-15)3
を得る。
■j((1+sqrt{-11})/2)を求める。
ρ=(1+sqrt{-11})/2とする。RK=Z+Zρである。
ρのnormは、|NQKρ|=((1+sqrt{-11})/2)*((1-sqrt{-11})/2)=3である。
同様に、あるα=((a b)(c d))∈D3に対して、
0=F3(j(τ),j(ατ))=F3(j(E),j(E))=H3(j(E))
pari/gpで、H3(X)を計算すると、
H2(x) = -x^6 + 4464*x^5 + 2585778176*x^4 + 17800519680000*x^3 - 769939996672000000*x^2 + 3710851743744000000000*x
= -x*(x - 54000)*(x - 8000)2*(x + 32768)2
であるので、j(E)は、0,8000,-32768,54000のどれかである。
pari/gpでτ=ρとして、直接j(τ)を近似計算すると、
j(τ) ≒ -32767.9999999999999
となるので、
j(τ) = j((1+sqrt{-11})/2) = -32768 = (-32)3
を得る。
■j((1+sqrt{-19})/2)を求める。
ρ=(1+sqrt{-19})/2とする。RK=Z+Zρである。
ρのnormは、|NQKρ|=((1+sqrt{-19})/2)*((1-sqrt{-19})/2)=5である。
同様に、あるα=((a b)(c d))∈D5に対して、
0=F5(j(τ),j(ατ))=F5(j(E),j(E))=H5(j(E))
pari/gpで、H5(X)を計算すると、
H5(x) = -x^10 + 7440*x^9 + 1665990262720*x^8 + 215757860427776000*x^7 - 440440798293848579637248*x^6 + 53797234800359280738891202560*x^5 + 4726025910884027749483397649530880*x^4 + 73669962723556137647021587795909017600*x^3 - 250688456991364600842741491417948646014976*x^2 + 106548661606848850900840320546713018302464000*x + 141359947154721358697753474691071362751004672000
= -(x - 1728)2*(x + 32768)2*(x - 287496)2*(x + 884736)2*(x^2 - 1264000*x - 681472000)
であるので、j(E)は、1728,-32768,287496,-884736,(632000±160sqrt(5*36529))のどれかである。
pari/gpでτ=ρとして、直接j(τ)を近似計算すると、
j(τ) ≒ -884735.99999999999999
となるので、
j(τ) = j((1+sqrt{-19})/2) = -884736 = (-96)3
を得る。
[2002.07.14追記]
j((1+sqrt{-7})/2),j((1+sqrt{-11})/2),j((1+sqrt{-19}/2)は、いずれも正確に有理整数の3乗数であることに注意する。
[参考文献]
- [1]Joseph H. Silverman, "The Arithmetic of Elliptic Curves", GTM 106, Springer-Verlag New York Inc., 1986, p338-351, ISBN0-387-96203-4.
- [2]Joseph H. Silverman, "Advanced Topics in the Arithmetic of Elliptic Curves", GTM 151, Springer-Verlag New York Inc., 1994, p104-148, ISBN0-387-94328-5.
- [3]Henri Cohen, "A Course in Computational Algebraic Number Theory", GTM 138, Springer-Verlag New York Inc., 1996, p383, ISBN-387-55640-0.
Last Update: 2005.06.12 |
H.Nakao |