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e^{π*sqrt{163}}≒26253741640768744


[2001.10.07]eπ*sqrt{163}≒26253741640768744


eπ*sqrt{163}を計算してみると、有理整数に近いことが分かる。
PARI/GP 2.1.1を使って、50桁の精度で計算すると、
gp> default(realprecision,50);
gp> exp(Pi*sqrt(163))
%81 = 262537412640768743.99999999999925007259719818568887
gp> abs(%81-262537412640768744)
%82 = 7.499274028018143111206461460 E-13
から、|eπ*sqrt(163)-262537412640768744| < 7.4993*10-13が分かる。
なぜそうなるかについて、考える。

■虚数乗法を持つ楕円曲線Eのj-不変量は、代数的数である。

■虚数乗法を持つ楕円曲線E/Cのj-不変量は、代数的整数である。

■Eisenstein級数
格子Λ=Zω1+Zω2(ただし、ω12\in C, Im(ω12)>0)に対して、Eisenstein級数
     G2k(Λ) = Σω\in Λ-{0}1/ω2k
は、k>=2に対して絶対収束する。
格子Λτ=Zτ+Z(ただし、τ\in C,Im(τ)>0)について、
     G2k(τ) = G2kτ) = Σm,n \in Z,(m,n)≠(0,0)1/(mτ+n)2k
とする。
任意のc \in C*に対して、
     G2k(cΛ) = c-2kG2k(Λ)
となる。

■modular j-不変量
modular j-不変量j(τ)は次の関数である。
     j(τ) = 1728g2(τ)3/Δ(τ)
ただし、
     g2(τ) = 60G4(τ)
     g3(τ) = 140G6(τ)
     Δ(τ) = g2(τ)3-27g3(τ)2
である。
よって、j(τ)は、楕円曲線EΛτ
     y2 = 4x3-g2(τ)x-g3(τ)
のj-不変量である。
楕円曲線EΛτ(C)は、Weierstrass \wp関数
     Cτ → EΛτ(C)
     z → (\wp(z;Λτ),\wp'(z;Λτ))
ただし、
     \wp(z;Λτ) = 1/z2ω\in Λ-{0}(1/(z-ω)2-1/ω2)
によって、パラメタ付けされる。

■類数1の虚2次体は次の9個に限ることがGaussによって予想され、Heegnerによって証明された。

     Q(sqrt{-1}), Q(sqrt{-2}), Q(sqrt{-3}), Q(sqrt{-7}), Q(sqrt{-11}),
     Q(sqrt{-19}), Q(sqrt{-43}), Q(sqrt{-67}), Q(sqrt{-163})

■j((1+sqrt{-163})/2) \in Z

■j(τ)のq展開は、
     j(q) = (1/q)+744+196884q+21493760q2+864299970q3+.....
ただし、q=e2πiτである。
ここで、τ=(1+sqrt{-163})/2を代入すると、
     q = -e-πsqrt{163} ≒ -3.809*10-18
となり、qは非常に小さい。
よって、整数j(q)は1/q+744に近く、1/q=-eπsqrt{163}は整数に近いことが分かる。PARI/GPで計算してみると、以下のようになる。
gp> tau=(1+sqrt(-163))/2
%83 = 1/2 + 6.3835726674018523308554760048904461736911818901506*I
gp> q=exp(2*Pi*I*tau)
%84 = -3.8089809370076523382262315164780054376196293193806 E-18 + 9.7088907526473594934315320321395596828011444865020 E-75*I
gp> 1/q
%85 = -262537412640768743.99999999999925007259719818568888 - 6.6919396551624242079611259532481068084197228617118 E-40*I


[参考文献]


Last Update: 2005.06.12
H.Nakao

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