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Diophantine Equation (1+1/x_1)(1+1/x_2)...(1+1/x_n)=2


[2003.10.26](1+1/x_1)(1+1/x_2)...(1+1/x_n)=2の正整数解


■n >= 2を正整数の定数とする。Diophantus方程式
     (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) = 2
の正整数解(x1,x2, ... ,xn)について、考察する。

■正整数n >= 1に対して、
     Fn(x1, ... ,xn)=(1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn)
とする。一般に、任意の正整数m,nに対して、
     Fn(x1, ... ,xn)=F1(x1)...F1(xn),
     Fm+n(x1, ... ,xm+n)=Fm(x1, ... ,xm)Fn(xm+1, ... ,xm+n)
であることは、簡単に分かる。

■定理1.
任意の正整数n >= 2に対して、
     Fn(x1, ... ,xn) = 2
は少なくとも1つの正整数解(a1, ... ,an)を持つ。
n >= 3なら、少なくとも2つの正整数解を持つ。

[証明]
     a1 = 2{20}, a2 = 2{21}, a3 = 2{22}, ... ,an-1 = 2{2n-2},
     an = 2{2n-1-1}
または、
     a1 = n, a2 = n+1, ... , an = 2n-1
とすると、簡単な計算により、
     Fn(a1, ... ,an) = 2
であることが分かる。
n = 2の場合は、上記の2つの解は一致する。
n >= 3の場合は、上記の2つの解は異なる。□

[2003.10.08追記]
2番目の自明な解(n,n+1,...,2n-1)は、九大)金子昌信様より、指摘されたものである。

■定理2.
n = 1,2,3,4,5に対して、
     2-1/{2(2n-1)} < Fn(x1, ... , xn) < 2
を満たす正整数x1, x2, ... , xnは存在しない。

[証明]
[n=1の場合]
正整数x1
     2-1/2 < F1(x1) < 2 ------- (i)
を満たすと仮定する。
     2-1/2 < 1+1/x1 < 2
より、
     2 > x1 > 1
を得るが、これを満たす正整数x1は存在しない。
よって、(i)は正整数解を持たない。□

[n=2の場合]
正整数x1,x2(ただし、x1 <= x2)が
     2-1/{23} < F2(x1,x2) < 2 ------ (ii)
を満たすと仮定する。
x1=1は(ii)を満たさないので、x1 >= 2である。
x2 >= 22と仮定すると、
     1 < F1(x2) <= 1+1/{22}
より、
     2-1/2 = (2-1/{23})/(1+1/{22}) <= (2-1/{23})/{F1(x2)} < F1(x1) < 2/{F1(x2)} < 2
つまり、
     2-1/2 < F1(x1) < 2
を得るが、[n=1の場合]より、これを満たす正整数x1は存在しない。
よって、x2 < 22を得る。

また、x1 <= x2より、
     (1+1/x2)2 <= F2(x1,x2) <= (1+1/x1)2 ----- (1)
を得る。(ii),(1)より、
     2-1/23 < (1+1/x1)2 ------ (2)
     (1+1/x2)2 < 2 ------ (3)
なので、
     x1 < 1/{sqrt(2-1/{23})-1} ≒ 2.707778735729046038448485093
     x2 > 1/{sqrt(2)-1} ≒ 2.414213562373095048801688724
でなければならない。
条件より、x1=2, x2=3 でなければならないが、
     F2(2,3)=2
なので、(2,3)は(ii)を満たさない。よって、(ii)は正整数解を持たない。□

[n=3の場合]
正整数x1, x2, x3(ただし、x1 <= x2 <= x3)が
     2-1/{27} < F3(x1,x2,x3) < 2 ------ (iii)
を満たすとする。
x1=1は(iii)を満たさないので、x1 >= 2である。
x3 >= 24と仮定すると、
     1 < F1(x3) <= 1+1/{24}
より、
     2-1/{23} = (2-1/{27})/(1+1/{24}) <= (2-1/{27})/F1(x3) < F2(x1,x2) < 2/F1(x3) < 2
つまり、
     2-1/{23} < F2/(x1,x2) < 2
を得るが、[n=2の場合]より、これを満たす正整数解(x1,x2)は存在しない。
よって、x3 < 24を得る。

また、x1 <= x2 <= x3 < 24より、
     (1+1/x1)*(1+1/{24})2 < F3(x1,x2,x3) <= (1+1/x1)3 ----- (4)
を得る。(iii),(4)より、
     2-1/{27} < (1+1/x1)3
なので、
     x1 < 1/{(2-1/{27})(1/3)-1} ≒ 3.871791255197218623214528186
でなければならない。
また、x1 >= 2より、1+1/x1 <= 2-1/2なので、(iii)より、
     2-1/{27} < F3(x1,x2,x3) <= (2-1/2)*(1+x2)2
である。つまり、
     x2 < 1/{sqrt((2-1/{215})/(2-1/2))-1} ≒ 6.464469745960035034038112043
でなければならない。
ここで、2 <= x1 <= 3, x2 <= 6, x3 < 24 である(x1,x2,x3)の有限の 組合せについて、(iii)を満たすものが存在しないことを確認できる。
よって、(iii)は正整数解を持たない。□

[n=4の場合]
正整数x1, x2, x3, x4(ただし、x1 <= x2 <= x3 <= x4)が
     2-1/{215} < F4(x1,x2,x3,x4) < 2 ------ (iv)
を満たすと仮定する。
[n=3の場合]と同様にして、x4 < 28を得る。
(iv)より、F1(x1) < F2(x1,x2) < F3(x1,x2,x3) < 2であるので、
[n=1,2,3の場合]の結果より、
     F1(x1) <= 2-1/2,
     F2(x1,x2) <= 2-1/{23}
を得る。これらと、x1 <= x2 <= x3 <= x4 < 216より、
     2-1/{215} < F4(x1,x2,x3,x4) <= (1+1/x1)4,
     2-1/{215} < F4(x1,x2,x3,x4) <= F2(x1,x2)*(1+1/x3)2 <= (2-1/{23})*(1+1/x3)2
である。よって、
     x1 <= 1/{(2-1/{215})-1} ≒ 5.285340230912947356226970375,
     x2 <= 1/{((2-1/{215})/(2-1/2))(1/3)-1} ≒ 9.936721159824501634036322335,
     x3 <= 1/{sqrt((2-1/{215})/(2-1/{23}))-1} ≒ 30.49926129902252646083691237
でなければならない。
ここで、x1 <= 5, x2 <= 9, x3<= 30, x4< 28である(x1, x2,x3,x4)の有限の 組合せについて、(iv)を満たすものが存在しないことを確認できる。
よって、(iv)は正整数解を持たない。□

[n=5の場合]
正整数x1, x2, x3, x4, x5(ただし、x1 <= x2 <= x3 <= x4 <= x5)が
     2-1/{231} < F5(x1,x2,x3,x4,x5) < 2 ------ (v)
を満たすと仮定する。
[n=4の場合]と同様にして、
     x1 <= 6,
     x2 <= 13,
     x3 <= 45,
     x4 <= 510,
     x5 < 216
を得る。ここで、上記を満たす(x1,x2,x3,x4,x5)の有限の組合せについて、 (v)を満たすものが存在しないことを確認できる。
よって、(v)は正整数解を持たない。□

■定理3.
n = 2,3,4,5,6に対して、
     (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) = 2
ならば、
     max{x1, x2, ... ,xn} <= 2{2n-1}-1
である。

[証明]
n = 2,3,4,5,6に対して、
     (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) = 2
および
     1+1/x1 > 1
より、
     (1+1/x2)...(1+1/xn) < 2
であるが、定理2より、
     (1+1/x2)...(1+1/xn) <= 2-1/{2(2n-1-1)}
となる。よって、
     1+1/x1 = 2/{(1+1/x2)...(1+1/xn)} >= 2/{2-1/(2(2n-1-1))} = 1+1/{2(2n-1)-1}
である。簡単な計算により、
     x1 <= 2(2n-1)-1
を得る。同様にして、
     xi <= 2(2n-1)-1 , i = 2, ... ,n
を得る。よって、
     max{x1,x2, ... ,xn} <= 2(2n-1)-1
が証明された。□

■系4.
n = 2,3,4,5,6に対して、
     Fn(x1, ... , xn) = 2
の正整数解(x1, ... , xn)は有限個である。
[証明]
定理3より、明らかである。□

■上記の定理2, 定理3, 系4は一般の正整数nに対してはまだ証明できていないので、これらを予想とする。
[予想1]
任意の正整数n >= 6に対して、
     2-1/{2(2n-1-1)} < (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) < 2
を満たす正整数x1, x2, ... , xnは存在しない。

[予想2]
任意の正整数n >= 7, x1, x2, ... , xnに対して、
     (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) = 2
ならば、
     max{x1, x2, ... , xn} <= 2(2n-1)-1
である。

[予想3]
任意の正整数n >= 7に対して、Diophantus方程式
     (1+1/x1)(1+1/x2)...(1+1/xn) = 2
の正整数解(x1,x2, ... ,xn)は有限個である。

■予想1が成立するならば予想2が成立すること、予想2が成立するならば予想3が成立することは容易に分かる。
予想1,予想2,予想3は一見正しそうに見えるが、証明できるだろうか?
または、反例を見つけることができるだろうか?

[2009.06.22追記]
n=3の場合、(*)の正整数解
     (x1, x2, x3),      ただし、x1 >= x2 >= x3 > 0
は5個である。また、n=4の場合、(*)の正整数解
     (x1, x2, x3, x4),      ただし、x1 >= x2 >= x3 >= x4 > 0
は43個である。
n=3,4の場合の(*)の正整数解をpari/gpで計算した結果は、こちら

Last Update: 2009.06.22
H.Nakao

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