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Integral Points on Surface: X^3+Y^3=Z^2


[2003.05.04]X^3+Y^3=Z^2の整点


■文献[1],p243で紹介されているDiophantus方程式
     C: X3+Y3 = Z2 ----- (1)
で表される曲面の整点[X,Y,Z]を求める。

(1)より、以下のことが直ちに分かる。
  1. [X,Y,Z]がCの整点ならば、[Y,X,Z]もCの整点である。
  2. [X,Y,Z]がCの整点ならば、[X,Y,-Z]もCの整点である。
  3. [X,Y,Z]がCの整点ならば、任意の整数dに対して、[d2X,d2Y,d3Z]もCの整点である。
  4. Z=0ならば、X=-Yである。よって、±[1,-1,0]はCの整点である。
  5. 任意の素数pに対して、p|Xかつp|Yならば、p2|Zである。
  6. 任意の素数pに対して、p|Xかつp|Zならば、p|Yである。
以下では、Z!=0, gcd(X,Y,Z)=1なる整点[X,Y,Z]を求める。

■文献[1],p243-244によると、曲面Cは、以下のように(s,t)でパラメータ表示された整点を持つ。[Zagier]

[pari/gpによる検算]
gp> x=s^4+6*s^2*t^2-3*t^4;y=-s^4+6*s^2*t^2+3*t^4;z=6*s*t*(s^4+3*t^4);
time = 18 ms.
gp>  x^3+y^3-z^2
time = 14 ms.
%7 = 0
gp>  (x/4)^3+(y/4)^3-(z/8)^2
time = 42 ms.
%8 = 0
gp>  x2=s^4+8*s*t^3;y2=-4*s^3*t+4*t^4;z2=s^6-20*s^3*t^3-8*t^6;
time = 2 ms.
gp>  x2^3+y2^3-z2^2
time = 1 ms.
%10 = 0
よって、上記の点がCの整点であることが確認できた。
また、(A2)の任意の整点[X,Y,Z]に対して、[22X,22Y,23Z]は(A1)の整点であることに注意する。

■[X,Y,Z]がCの整点であり、Z!=0, gcd(X,Y,Z)=1を満たすとする。
(1)より、X,Y,Zは互いに素として良い。(1)より、
     (X+Y)(X2-XY+Y2) = Z2 > 0 --------- (2)
である。gcd(X,Y)=1より、
     gcd(X+Y,X2-XY+Y2) = gcd(X+Y,(X+Y)2-3XY) = gcd(X+Y,3XY) = 1 or 3.
を得る。
     X2-XY+Y2 = ((2X-Y)2+3Y2)/4 > 0
なので、(2)より、
     X+Y > 0
を得る。

■gcd(X+Y,X2-XY+Y2) = 1の場合
(2)より、整数a,bが存在して、
     X+Y = a2 -------- (3)
     X2-XY+Y2 = b2 -------- (4)
     Z = ab -------- (5)
     gcd(a,b) = 1
となる。

(3),(4)より、
     a4-3XY = b2
     XY = (a4-b2)/3 ------ (6)
を得る。(3),(6)より、X,Yは2次方程式
     t2 - a2t + (a4-b2)/3 = 0 ------ (7)
の2根である。
よって、(7)の判別式は整数の平方数c2に等しい。
     a4-4(a4-b2)/3 = c2
     a4-4b2+3c2 = 0 ------ (8)
ここで、
     x=a2,y=2b,z=c -------- (9)
とすると、x,y,zは整数であり、(8)より、
     x2-y2+3z2 = 0 ------ (10)
を得る。ここで、[x,y,z]!=[0,0,0]である。
(10)は、自明でない整点[1,2,1]を持つ。

文献[4] Chap. IV(p45-57)の方法で、(10)の整点をパラメータ表示する。
最初に、r,p,q ∈ Qとする。
     x=r, y=2r+p, z=r+q ------- (11)
と置いて、(10)に代入すると、
     r2-(2r+p)2+3(r+q)2 = 0
     (-4p+6q)r = p2-3q2 ----- (12)
となる。(11),(12)より、
     (-4p+6q)x = p2-3q2
     (-4p+6q)y = 2(p2-3q2)+(-4p+6q)p = -2p2+6pq-6q2
     (-4p+6q)z = (p2-3q2)+(-4p+6q)q = p2-4pq+3q2
を得る。
有理数p,qに共通の分母を掛けたものを改めてp,qとすると、p,qは互いに素な整数としてよい。
よって、ある整数gが存在して、
     gx = p2-3q2 ------ (13)
     gy = 2(p2-3q2)+(-4p+6q)p = -2p2+6pq-6q2 -------- (14)
     gz = (p2-3q2)+(-4p+6q)q = p2-4pq+3q2 -------- (15)
つまり、
     g[x; y; z] = [1,0,-3; -2,6,-6; 1,-4,3] [p2; pq; q2]
となる。
ここで、g=0なら、-4p+6q=0かつgcd(p,q)=1より、(p,q)=±(3,2)となるが、p2-3q2 = -3 != 0なので、(13)に矛盾する。
よって、g!=0である。
3×3行列A=[1,0,-3; -2,6,-6; 1,-4,3]のHermite normal formおよびSmith normal formを計算すると、以下のようになる。
[pari/gpによる計算]
gp>  A=[1,0,-3; -2,6,-6; 1,-4,3]
time = 6 ms.
%146 = 
[1 0 -3]

[-2 6 -6]

[1 -4 3]

gp>  mathnf(A,0)
time = 8 ms.
%147 = 
[6 2 3]

[0 2 0]

[0 0 1]

gp>  matsnf(A,0)
time = 21 ms.
%148 = [6, 2, 1]
整数gは行列AのSmith normal formであるdiag(6,2,1)の最大基本因子6を割り切るので、
     g = ±1, ±2, ±3, ±6
となる。
行列AのHermite Normal Formより、
     6p2+2pq+3q2 ≡ 0 (mod g) ------ (16)
     2pq ≡ 0 (mod g) -------- (17)
     q2 ≡ 0 (mod g) -------- (18)
が成立する。

g=±6の場合、(13)より6|p、(18)より6|qなので、gcd(p,q)=1に矛盾する。
g=±3の場合、(13)より3|p、(18)より3|qなので、gcd(p,q)=1に矛盾する。
g=±2の場合、(15)より2|p、(18)より2|qなので、gcd(p,q)=1に矛盾する。
よって、g=±1としてよい。g=1の場合とg=-1の場合では、(x,y,z)の符号が同時に反転するだけなので、g=1の場合のみを考察する。
     x = p2-3q2
     y = -2p2+6pq-6q2
     z = p2-4pq+3q2
     gcd(p,q) = 1
となる。
(9)より、
     a2 = p2-3q2 ----- (19)
     b = -p2+3pq-3q2 ------ (20)
     c = p2-4pq+3q2 ------ (21)
を得る。

(19)より、
     (p+a)(p-a) = 3q2
を得る。
ここで、gcd(p,a)=1 (*)と仮定すると、gcd(p+a,p-a) = gcd(p+a,2a) = 1 or 2となる。
★gcd(p+a,2a)=1の場合、p,q,aの符号を適当に変更することにより、
     p+a = 3u2
     p-a = v2
     q = uv
     gcd(u,v)=1
として良い。よって、
     p = (3u2+v2)/2
     a = (3u2-v2)/2
を得る。(20),(21)より、
     b = (-9u4+18u3v-18u2v2+6uv3-v4)/4
     c = (9u4-24u3v+18u2v2-8uv3+v4)/4
(7)より、必要ならX,Yを入れ換えることにより、
     X = (a2+c)/2 = (9u4-12u3v+6u2v2-4uv3+v4)/4
     Y = (a2-c)/2 = uv(3u2-3uv+v2)
     Z = ab = (-27u6+54u5v-45u4v2+15u2v4-6uv5+v6)/8
を得る。
★★gcd(p+a,2a)=2の場合、p,q,aの符号を適当に変更することにより、
     p+a = 6u2
     p-a = 2v2
     q = 2uv
     gcd(u,v)=1
として良い。よって、
     p = 3u2+v2
     a = 3u2-v2
を得る。(20),(21)より、
     b = -9u4+18u3v-18u2v2+6uv3-v4
     c = 9u4-24u3v+18u2v2-8uv3+v4
(7)より、必要ならX,Yを入れ換えることにより、
     X = (a2+c)/2 = 9u4-12u3v+6u2v2-4uv3+v4
     Y = (a2-c)/2 = 4uv(3u2-3uv+v2)
     Z = ab = -27u6+54u5v-45u4v2+15u2v4-6uv5+v6
を得る。
最後に、パラメータ(u,v)と(s,t)の間の一次変換(GL(2,Z)の元とみなす)を、
     u=s, v=s+t
つまり、
     s=u, t=v-u
とすると、★の場合は、
     X = (-8s3t+t4)/4
     Y = s4+st3
     Z = (-8s6+20s3t3+t6)/8
★★の場合は、
     X = -8s3t+t4
     Y = 4s4+4st3
     Z = -8s6+20s3t3+t6
を得る。
これらは、パラメータ(s,t)を適当に変換することにより、(A3)と同一と見なすことができる。

ただし、ここでの推論は仮定(*)が成立しない場合を検証していないので、不完全である。つまり、他にも整点を持つ可能性がある。

■gcd(X+Y,X2-XY+Y2)=3の場合
(2)より、整数a,bが存在して、
     X+Y = 3a2 -------- (22)
     X2-XY+Y2 = 3b2 -------- (23)
     Z = 3ab -------- (24)
     gcd(a,b) = 1
となる。

(2),(23)より、
     9a4-3XY = 3b2
     XY = (3a4-b2) ------ (25)
を得る。(22),(25)より、X,Yは2次方程式
     t2 - 3a2t + (3a4-b2) = 0 ------ (26)
の2根である。
よって、(26)の判別式は整数の平方数c2に等しい。
     9a4-4(3a4-b2) = c2
     -3a4+4b2 = c2
     (2b+c)(2b-c) = 3a4
を得る。
ここで、gcd(2b,c)=1,gcd(2b+c,2b-c)=1 (**)と仮定する。
b,c,aの符号を適当に交換、必要に応じてs,tを交換することにより、
     2b+c = 3s4
     2b-c = t4
     a = st
     gcd(s,t) = 1
を得る。よって、
     b = (3s4+t4)/4
     c = (3s4-t4)/2
を得る。(27)より、必要に応じて、X,Yを交換することにより、
     X = (3a2+c)/2 = (1/4)(3s4+6s2t2-t4)
     Y = (3a2-c)/2 = (1/4)(-3s4+6s2t2+t4)
     Z = 3ab = (3/4)st(3s4+t4)
を得る。
これは、パラメータ(s,t)を交換すると、(A2)と同一と見なすことができる。

ただし、ここでの推論は仮定(**)が成立しない場合を検証していないので、不完全である。つまり、他にも整点を持つ可能性がある。



[参考文献]


Last Update: 2005.06.12
H.Nakao

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