wasan
和算の問題に挑戦[2001.10.13]
和算の連立高次方程式を1つ解いてみた。
問題は、x,yの連立方程式
2x3+x2y2+xy+2y3=0 ----- (1)
3x3-4x2y2-2xy+y3=0 ----- (2)
である。
(x,y)=(0,0)は解である。
また、x=0 <====> y=0であることは、明らかである。
よって、(x,y)≠(0,0)なる解を求める。
xy=kとおくと、
2x3+2y3=-k2-k ----- (3)
3x3+y3=4k2+2k ----- (4)
となる。(3),(4)より、x3,y3を求めると、
x3=(9/4)k2+(5/4)k ----- (5)
y3=-(11/4)k2-(7/4)k ----- (6)
となる。xy=kより、
x3y3=(xy)3=k3 ------------- (7)
なので、(5),(6),(7)より、x3,y3を消去すると、
{(9/4)k2+(5/4)k}{-(11/4)k2-(7/4)k}=k3
となる。k=xy≠0なので、両辺を-k2/16で割ると、
(9k+5)(11k+7)=-16k
99k2+134k+35=0
(k+1)(99k+35)=0
k=-1,-35/99 ----------------------- (8)
(8)を(5)に代入して、
x3=1,-175/1089
x=1,ω,ω2, (k=-1の場合)
-{\root 3 \of {175/1089}},-{\root 3 \of {175/1089}}ω,-{\root 3 \of {175/1089}}ω2 (k=-35/99の場合)
(8)を(6)に代入して、
y3=-1,245/891
y=-1,-ω,-ω2, (k=-1の場合)
{\root 3 \of {245/891}},{\root 3 \of {245/891}}ω,{\root 3 \of {245/891}}ω2 (k=-35/99の場合)
を得る。ただし、ωは1の3乗根(-1+\sqrt{-3})/2である。
この中で、xy=kを満たす組合せは、以下の通りである。
(x,y)=(1,-1),(ω,-ω2),(ω2,-ω),
(-{\root 3 \of {175/1089}},{\root 3 \of {245/891}}),
(-{\root 3 \of {175/1089}}ω,{\root 3 \of {245/891}}ω2),
(-{\root 3 \of {175/1089}}ω2,{\root 3 \of {245/891}}ω)
よって、連立方程式(1),(2)の解は、(x,y)=(0,0)と合わせて、
(x,y)=(0,0),(1,-1),(ω,-ω2),(ω2,-ω),
(-{\root 3 \of {175/1089}},{\root 3 \of {245/891}}),
(-{\root 3 \of {175/1089}}ω,{\root 3 \of {245/891}}ω2),
(-{\root 3 \of {175/1089}}ω2,{\root 3 \of {245/891}}ω)
となる。
和算では、行列式を使ったより一般的な解法で解いている。
(x,y)≠(0,0)とする。
(1),(2)より、y2,yの連立方程式を導く。
具体的には、(2)*2-(1)*3より、
-4y2-11x2y-7x=0 ------- (9)
(1)*2+(2)+(9)*x2より、
5y2-6x2y-11x4=0 --------- (10)
(1)-(2)*2より、
9xy2+5y-4x2=0 --------- (11)
を得る。これを、行列で表現すると、
(-4 -11x2 -7x) (y2) (0)
(5 -6x2 -11x4) (y) = (0)
(9x 5 -4x2) (1) (0)
ここで、列ベクトルt(y2,y,1)はt(0,0,0)に一致しないので、左辺の3次正方行列の行列式=0である。つまり、
|-4 -11x2 -7x |
|5 -6x2 -11x4| = 0
|9x 5 -4x2|
である。行列式を展開して、
1089x7-914x4-175x=0
x≠0より、
1089x6-914x3-175=0
左辺は因数分解できて、
(x-1)(x2+x+1)(1089x3+175)=0
これから、xを求めることができる。
参考文献
- [1]田崎 中, "江戸時代の数学", 総合科学出版, p58-74, 1983, {2300円}.
Last Update: 2006.08.19 |
H.Nakao |