Triangle
周囲一定の三角形の面積の最大値[2002.03.30]
三角形ABCの三辺の長さをa,b,c > 0とし、a+b+cが一定(=2s > 0とする)であるとき、面積が最大になるのはいつか?という簡単な問題を解いてみよう。
辺aの長さを固定すると、b+cが一定(=2s-a)となり、頂点Aはaの両端を焦点とするある決まった楕円上を動く。
三角形の面積が最大になるのは、辺aに対する高さが最大になるとき、つまりb=cである2等辺三角形のときである。
よって、a,b,cを動かした場合は、a=b=cつまり、正三角形の場合に面積が最大になりそうだと予想できる。
実際にそうであることを証明する。
D={(a,b,c) ∈ R3; a≧0,b≧0,c≧0,a+b≧c,b+c≧a,a+b≧c,a+b+c=2s}
とすると、D⊂R3は有界閉集合であり、その境界は、
∂D={(a,b,c) ∈ R3; a≧0,b≧0,c≧0,(a+b=c=s or b+c=a=s or a+b=c=s)}
となる。(a,b,c)を3辺とする三角形の面積Sは、S=sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}である。
∂D上では、S=0であり、D-∂D上では、S > 0であることが直ちにわかる。
Sを最大にするには、S2=s(s-a)(s-b)(s-c)を最大にすれば良い。
S2をD上の関数と考えると、連続なので、有界閉集合D上で最大値mを取る。
m > 0より、最大値mは、D-∂D上の点で取る。
S2はa,b,cの多項式関数であるので、a,b,cにより偏微分可能であり、最大値を与える点で極値をとる。
束縛条件a+b+c=2sを考慮すると、Lagrangeの乗数法により、(a,b,c)で極値をとる必要条件は、ある未知の定数λについて、
F(a,b,c)=s(s-a)(s-b)(s-c)+λ(a+b+c-2s)
とするとき、
∂F/∂a=∂F/∂b=∂F/∂c=0
である。
つまり、
-s(s-b)(s-c)+λ=-s(s-a)(s-c)+λ=-s(s-a)(s-b)+λ=0
s(s-b)(s-c)=s(s-a)(s-c)=s(s-a)(s-b)=λ
となる。(a,b,c)∈D-∂Dなので、s-a > 0,s-b > 0,s-c > 0より,
a=b=c=(2/3)s, λ=s3/9
を得る。
D-∂D上で極値を取る点は、1点((2/3)s,(2/3)s,(2/3)s)のみなので、S2は、実際に、この点で最大値m=s4/27をとる。
よって、Sが最大になるのは、a=b=c=(2/3)sのときで、最大値はs2/{3*sqrt(3)}である。
また、Lagrangeの乗数法を使わなくても証明できる。
(s-a)>0,(s-b)>0,(s-c)>0について、相乗平均≦相加平均より、
{(s-a)(s-b)(s-c)}(1/3)≦{(s-a)+(s-b)+(s-c)}/3=(1/3)s
である。等号はs-a=s-b=s-cのとき、つまり、a=b=c=(2/3)sのときに成立する。
これより、
(s-a)(s-b)(s-c)≦{(1/3)s}3=(1/27)s3
s(s-a)(s-b)(s-c)≦(1/27)s4
S=sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}≦s2/{3*sqrt(3)}
となる。Sの最大値はs2/{3*sqrt(3)}(a=b=c=(2/3)sのとき)である。
[2002.04.14追記]
周囲一定の四角形で面積が最大になるのは、正方形のときであることが(三角形の場合よりも)簡単にわかる。
参考文献
- [1]高木 貞治, "解析概論<改訂第三版>", 岩波書店, 1961(1977 第19刷), p320-324, {2500円}.
Last Update: 2005.06.12 |
H.Nakao |