JANT7
JANT第7回研究部会に行く[2002.05.11]
日本応用数理学会「数論アルゴリズムとその応用」の研究部会(JANT)が、東京大学駒場キャンパス数理科学研究科で開催されたので、参加した。最寄り駅は、京王井の頭線の駒場東大前駅である。この研究集会への参加は3回目である。
今回の発表は、数学寄りのものが多かった。Pell方程式の解法や量子計算の話題もあり、興味深かった。
集会終了後に行なわれる懇親会にも参加した。今回は10数名が参加し、渋谷に移動して入った店の中で、喫煙テーブルと禁煙テーブル(隣接する2テーブル)に分かれたのが、良かった。いろいろと興味深い話題で盛り上がり、短い時間ではあったが、楽しく過ごした。
[2002.05.19追記]
今回の発表で特に興味深かった話題は、円分体K=Q(ζn)の整数環ZK=Z[ζn]について知られているいくつかの定理と未解決の問題である。
- 全部で30個のZKが単項ideal整域(P.I.D)となる。
n = 1,3,4,5,7,8,9,11,12,13,15,16,17,19,20,21,24,25,27,28,32,33,35,36,40,44,45,48,60,84
ここで、nの条件は、\varphi(n)≦20 または n ∈ {35,45,84}と同値である。
- \varphi(n)≦10ならば、ZKはnorm-Euclidean整域である。(Lenstra)
これら13個のKは、以下のnで与えられる。
n = 1,3,4,5,7,8,9,11,12,15,16,20,24
n=16の場合はOjalaによって、n=24の場合はLanstraによって証明された。
- n=32のとき、ZKはnorm-Euclidean整域ではない。
[証明の方針]
ζ=ζ32とすると、ζ16+1=0である。KのClass Numberは1であるので、Kは単項ideal整域(P.I.D)である。
1+(1+ζ)5を(1+ζ)6で除した商をq,剰余をrとすると(q, r ∈ ZK)、
1+(1+ζ)5 = q(1+ζ)6+r
である。よって、
1 = -(1+ζ)5+q(1+ζ)6+r ----- (1)
である。
(1+ζ)のnormを計算すると、NK/Q((1+ζ)) = 2となるので、(1+ζ)は単数ではない。
rが(1+ζ)で割り切れると仮定すると、(1)の右辺が(1+ζ)で割り切れるので、(1+ζ)が(1)の左辺の1を割り切ることになり、矛盾する。
よって、rは(1+ζ)で割り切れない。特にr≠0である。
pari/gpで調べると、ある整数a ∈ ZKのnormに一致する63以下の自然数は、1,2,4,8,16,32だけである。NK/Q(a)=1なら、aは単数である。NK/Q(a)が2で割り切れるならば、aは(1+ζ)の倍数となることが分かる。
剰余rは(1+ζ)で割り切れないので、rが単数でないことを示せば十分であるが、まだ証明できていない。
[2002.06.02追記]
ZK上の単項ideal(1+(1+ζ)^5)を素ideal分解すると、
(1+(1+ζ)^5) = (ζ+2)(ζ+443,1601)(ζ+1161,3041)
となる。それぞれのideal normを計算すると、
NK/Q((1+(1+ζ)^5)) = 319076125217 = 1601*3041*65537
NK/Q((ζ+2)) = 65537
NK/Q((ζ+443,1601)) = 1601
NK/Q((ζ+1161,3041)) = 3041
となる。
- ZKがnorm-Euclidean整域であるかどうかが未解決なのは、以下の16個
n = 13,17,19,21,25,27,28,33,35,36,40,44,45,48,60,84
の場合である。
参考文献
- [1]Malcolm Harper, "A proof that Z[\sqrt{14}] is a Euclidean domain", McGoll University, Montreal, Canada, 2002, Ph.D Thesis.
Last Update: 2005.06.12 |
H.Nakao |